「先生、止っていた時計を直しているから、時計が鳴ったのだと思いますよ」 「ああ、そうか。時計の針を動かしていたんだね」 「きっと、そうなんでしょう。だから、ぼうんぼうんと、幾つも打ちましたよ」 「なるほど、なるほど」 「ところが、先生、それがどうも、へんなんですよ」 「へん? へんとは、何がへんなのかね」  新田先生は、千二少年の話に、たいへんひかれた。 「その時計の鳴り方ですよ。はじめ、ぼうんと一つうち、次にぼうんぼうんと二つうち、それからぼうんぼうんぼうんと三つうち……」 「つまり、一時、二時、三時だな。すると一時間おきに鳴る柱時計は、めずらしい」 「先生、僕がへんだと言ったのは、そのことじゃありません」  と、千二は、先生の言葉をさえぎった。 「えっ」 「僕がへんだと思ったのは、ぼうんぼうんぼうんと三つ打ったのち、こんどは四つ打つかと思ったのに、ぼうんぼうんぼうんぼうんぼうんと五つ打ったのです。それから次は六つ、次は七つと、それからのちはあたり前に打っていったのです」  千二が床下で聞いた柱時計の不思議について、新田先生は、首をかしげて考えこんだ。 「ふうむ、柱時計が一時・二時・三時とうって四時がぬけ、それから、五時・六時・七時とうっていったと言うんだね」 「そうなんですよ、先生」 「不思議だねえ」  と、新田先生は、四時をうたない時計の謎を、どう解いてよいか迷った。 http://www.sagi110.jp/ 社債・格付情報 | IR(投資家情報) | 豊田通商株式会社